陽のあたる裏路地

観た映画や、読んだ本について書くブログ。ぬるっと始めたので詳細はまだ不明。

『ぼっちーズ』入間人間

 

ぼっちーズ (メディアワークス文庫)

ぼっちーズ (メディアワークス文庫)

 

 

 大学生にもなっても友達ができない。一緒に授業を受ける相手も、笑いながら学食を食べる仲間もいない。そんな人間たちに謎の保険医(性別不明)から秘密基地が与えられる。

 狭く、酢飯くさい秘密基地は「闘うための場所」だという。一体何と闘えばいいのか? 仮初の居場所を与えられた四人の大学生たちは、実りある学生生活のために闘いを始める。

 というわけで、本書『ぼっちーズ』は大学生たちを主人公としたオムニバス形式となっている。主人公たちは全員「ぼっち」だ。たくさんの人で溢れる大学の中で、孤独に喘ぐ彼らは、それでも手探りで自分たちの居場所を模索する。

 折り鶴を使っての告白、夜の大学でのオセロ勝負、墓場での肝試し。彼らの姿は滑稽なうえ痛々しく、しかし切ない。 

 それでも彼らは自分なりの方法で、自分にとって価値あるものを見出していく。

「友達がいないのはおかしい」とか、「大学生活は明るく楽しいべき」とか。

 そういった固定観念に抗う、4人のぼっちたちの物悲しくも面白い活躍。そこに入間人間らしい仕掛け(‥‥と書くだけで、ネタバレになっているかも)が効いてくるのだが、しかし物語の真骨頂は最後の最後にやってくる。

 秘密基地を受ける際、いつも渡されていた謎の用紙。最後にその正体が明かされたときに「あっ」と思わされた。

 

 この物語は、長い年月をかけて一人の男が夢を叶える話ではないか?

 

長かったなぁ。‥‥‥ほんと、かかったなぁ

 

 クライマックスで、あるキャラのこの言葉にはグッときた。

 もう大学生でなくなっても、ぼっちのままでも、何かを成し遂げた。それがどれほどささやかであったとしても、その闘った証はどこまでも輝かしい。そのことをこの小説はあくまで慎み深く、ささやかに示している。