また本の感想を少し
ちょっと時間をとれなくてブログをサボりまくっているが、せっかくなので最近読んだ本について簡単な感想を。
「終章からの女」連城三紀彦
連城三紀彦は好きな作家だが、これはいまいち。
連城といえば逆転。ただ、今作ではその逆転が無理くりな感じがして、うまく乗れない。
なぜ女はわざと有罪になるようなことをしたのか? というのがメインの謎であり、この謎を有効なものにするために連城は女の過去について色々と書き込む。しかし、特殊な行動に説得力を求めるために「火祭り」や「法律への執着」など特殊な状況をあれこれ付け加え、それらが物語の中で綺麗に収まらず歪な印象をもたらす。
物語がリアリティを飛び越えてロマン主義的な空間に入るのも連城らしいといえるが、この作品ではなぜか鼻についてしまった。
ノモンハン事件について、当事者である軍人たちのインタビューを中心に構成されたノンフィクション。新書なので読みやすい。
日本陸軍の問題点が嫌というほど書かれている。
一度やると決めたら作戦を修正できず、反対意見はムリに封じられる融通の利かなさ。都合の悪い情報から目を背け、天皇の命令さえ無視する自己肯定。捕虜となることへのあまりに感情的な態度。そして集団の責任を個人に帰す不条理。
関東軍と参謀本部の間で不和が起こり、そのとばっちりを現場の人間たちが全て負わなければならない。特に部下に自殺を強要する場面は読んでいて胸糞悪い。
その中でもピックアップされるのが辻政信。
家族や故郷の地では父として、人間として尊敬される男。ノモンハン事件の主導者として生き残った一兵卒からは徹底して憎まれる軍人。
戦後のインタビューで、ある関東軍の部下が「辻さんのやることは全ていいことだ」と言ってノモンハン事件を肯定しているのにはゾッとした。
辻や服部四郎らノモンハン事件を先導した軍人は左遷からすぐに名誉回復されたのに対し、一兵卒はずっと戦争の影を引きずる。最終章の人々の姿に、多くの人生を捻じ曲げる戦争の不条理なパワーが感じられた。
ついに完結した百合漫画の金字塔。
最終巻は全編見所だらけ。全8巻できっちりと物語を着地させる手腕は見事。初連載でこれだけの物語を描いた仲谷鳰はやっぱりすごい。
佐伯沙弥香との決着は前巻でついているため、八巻では侑と燈子、二人の関係について集中して描かれている。
今まで見られなかった二人の表情。特に44話にはびっくり。まさか<二人の同衾>まで描くとは。『好き』がわからなかった少女と信じられなかった少女。二人が未来へと歩いていくラストのカラーページは感動した。
かなり作り込まれた物語なので、一巻から読み返せばさらなる発見があるかも。
「安達としまむら 1」柚原もけ
今では入間人間の代表作ともいえるシリーズの再コミカライズ。まだクールさを保っていた安達が楽しめる。しかし、百合作品であることを強調するためにストーリーの再構築が行われ、それに合わせて安達がクールだった期間も短くなっていて、ちょっと残念。カラオケのシーンはどうしたんだ。
ただ絵柄もかわいく、改めて読んでも面白いと思う。アニメの方はどうなっているだろう。
でも、前のガンガン版のコミカライズも好きだった。というかそっちで安達としまむらを知ったので、思い出深いのだ。
巻末には入間人間の小説が載っている。第一話の直前の話だが、物語が始まるきっかけのアレを安達が提案していたというのはとても感慨深い。