陽のあたる裏路地

観た映画や、読んだ本について書くブログ。ぬるっと始めたので詳細はまだ不明。

ミステリ感想その2

すべてがFになる森博嗣

 

 

 超有名作であり、ファンも多いシリーズであるが、どういうわけか自分には合わなかった。
 冒頭、物語は天才科学者と主人公の一人である、女子大生の会話から始まる。この科学者の言葉の一つ一つが刺激的で期待が高まるが、結局はここが一番の盛り上がりだった気がする。
 主人公たちがどうも好きになれず、恋の鞘当てがうっとうしい。

 才能ある科学者たちが生活し、研究生活を行う島。そこを舞台とした密室殺人というシチュエーションは魅力的だが、側では学生たちがキャンプしていたり、予想ほど切迫しておらず呑気な雰囲気だ。それに名前のついたキャラが少ないため、割とこじんまりとした印象を受ける。
 自分は完全な文系人間なので、科学者である主人公たちの含蓄のある言葉には凝り固まった価値観を揺さぶるような面白さを感じたが、これなら小説でなくてエッセイでも良い。
 トリックには「なるほど」と思わされるが、動機の部分ではモヤモヤしてしまった。犯人はある想定外をきっかけに殺人を決行するのだが、そんな想定外をあの人物が察知できないのか? ハッタリを効かせすぎて変になっているような気がする。
 とはいえ、自分は「すべてがFに」の真相を説明されてもよくわからなかったりする低脳なので、もっと頭の良い人が読めば納得するのかもしれない。
 結局、作者は真賀田四季という天才科学者を書きたかったのだろう。確かに魅力的なキャラなのだが、ストーリー自体がどうにも合わなくて残念。

 

『人形はなぜ殺される』高木彬光

 

 

 こちらも本格ミステリのオールタイムベストに名前が挙がるような有名作。
 作者の高木彬光は本作のトリックにかなりの自信があったようで、「読者への挑戦」が二度も挿入される気合の入りようである。そこでの古めかしく、大袈裟な言い回しの啖呵が素晴らしい。

<筆者の投げる手袋は、「人形はなぜ殺される?」>

だが、殺人のメイントリック、その方法と動機は読んでてほぼ完璧に分かってしまった。しかも名探偵より早く。こんなことは自分には珍しい。そのため、やはり作品の評価も辛くならざるを得ない。

 むしろ「切り取った首をどう始末したか」という方が意外なうえに禍々しく、面白かった。

 名探偵の神津恭介は、特徴がマシマシされているせいで、むしろ没個性的になっている。その天才性がもっと誇張されていた方が面白かったかもしれないのだが、人間的に苦悩するのが中途半端で、むしろキャラの魅力をスポイルしている気がする。

 ちなみに光文社文庫の解説にはメイントリックに関する若干のネタバレがあるため、注意されたい。

 

・・・なんだかクサしてばっかりの記事になったが、次回は面白かった作品の感想を。