陽のあたる裏路地

観た映画や、読んだ本について書くブログ。ぬるっと始めたので詳細はまだ不明。

安達としまむら(7) 入間人間

 

 

『いもーとらいふ』を読んだときにも思ったが、入間人間は働くことを実に嫌そうに書く。学生から社会人になり、これから何十年も同じ職場で働かなければならないことへの違和感、または会社に行くまでの、1日の始まりなのに体から抜けない疲労感、こういった社会人の乾いた生活を生々しく書けるのに、作者自身は社会人経験がないらしい。なんとなくずるい気がする。

 

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祝日のピンク

 12月23日の朝、起きた瞬間に京都へ行こう、それでピンク映画を観ようと思い立った。とにかく今年のうちにピンクを一本観ておこう、そうしなければならない。前触れも脈絡もない強い思いに突き動かされ、阪急電車に飛び乗った。

 しかし電車に揺られている間に硬かったはずの決意がポロポロと崩れ出し、心細くなってきた。そもそも高い金を払って時間をかけてまで観に行くようなものなのか、しかも天皇誕生日にピンク映画なんて時代が時代なら不敬罪じゃないか。くだらないことでうんうん悩みながら、結局京都に着いてしまったらもう行くしかない。なにせ他にやることもないのだから。

 観光地からはずれたところにある映画館に入ると、古い建物の匂いがした。おじさんがテレビ(韓国ドラマだった)を観ながら店番(?)していた。愛想の良いおじさんから券を買って、シアターへ入ると、午前中でも何人かの先客がいた。自分も手ごろな席に座って、スクリーンを見る。 

 この映画館には前にも一回きたことがあるが、お客さんのマナーがいい。禁煙を無視してタバコを吸っているおっさんや、映画をみながら口喧嘩を始めだすおっさんもいない。ずいぶん平和である。みんなが映画に集中している。

 それはそれで映画館としては望ましいのかもしれないが、どうにも落ち着かない。普通の映画館なら気にならなかっただろうが、なんせピンク映画なのだ。女を押し倒して「奥さん、ここがいいんだろう」みたいなシーンを20人そこらがじーっと観ているという、その姿は滑稽というか、なにかとんちんかんな感じがする。一回そんなことを考え出すと、どうしても映画に集中できない。

 そもそも映画自体があまり面白くない、ハズレの回だった。まじめに観るならバカバカしく、コメディとして観るならバカが足らない。三本立てだったが、三本目の途中で帰ることにした。映画館を出る瞬間、こんなはずじゃなかったという思いが頭の中をぐるぐる回った。

 映画館の外は雨が降っていた。冷たい雨の中を歩くのは、残された気力を打ち砕くのに十分すぎるほどだった。せっかくの祝日に何をしにいったのか、ますますわからない。こんなはずではなかった。ではどうなって欲しかったのか?そんなこともわからない。

 この文章も、どうやって締めくくったらいいのかわからない。

「闇の歯車」(藤沢周平)を読み、深い虚無の世界に浸る

  藤沢周平の小説を初めて読んだのは中学生のときで、本は「隠し剣秋風抄」だったと思う。

 

新装版 闇の歯車 (講談社文庫)

新装版 闇の歯車 (講談社文庫)

 

 

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宮本武蔵(1973 加藤泰)

加藤泰の『宮本武蔵』を観た。過去に東映の『宮本武蔵』五部作は観たことがあったが、あれに比べるといかにも加藤泰、というような映画だった。

 

 

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